患者様のご家族に対する、精神的ケアの必要性について

日本は医療が比較的皆に行き渡っているという点では、ありがたい国です。
早く生れてしまい、自分で呼吸が出来ない赤ちゃんは、呼吸する為の管を挿入され、命を繋ぐことができます。
年配の方は特別養護老人ホームから在宅看護に至るまで、丁寧なケアが出来る様になりました。
一方で、医療の進歩は難しい決断をご家族に強いる事になります。
ここで、私の祖父の話をさせて下さい。
祖父は認知症でしたが、体はずっと健康でした。
有料老人ホームでもビンゴを楽しみ、記憶が欠けていっても、穏やかな人格はそのままでした。
しかし、ある時状況は一変します。
誤嚥性肺炎を患いました。
これは年配の方に多い、食事や唾液が肺に入り込んでしまい、炎症を起こしてしまう病気です。
そして、私達家族は祖父に胃ろうを施すかドクターに尋ねられました。
胃に穴をあけて、寝たきりになっても栄養を注ぎ込んで生きてもらうのか。
…結論は、「いいえ」でした。
数週間後、祖父は穏やかな顔で逝きました。
幸い私達は、もう後悔はありませんでした。
「祖父の人生は幸せなものだった」、「無理矢理命をつなぎ留めなくてよかった」と自信があったからです。
けれど、世の中の人は全てそうだ、とは言い切れません。
現代の医療に必要なのは、急速な進歩だけでなく、決断を下したご家族への精神的なケアなのだと私は考えています。